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ねぼしかぼちゃ
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吸血ノミの餌食

 ウィンは粘着落とし穴に落ちてしまった。

 穴の底で紫色のねばねばとした粘液に囚われていた。

 持っていた杖は目の前に落ちていた。

 しかし、手に粘液が纏わりつき、杖に手を伸ばすこともできなかった。

「う・・・ああっ・・・」

 ウィンの攻撃力は半分になってしまった。

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 岩肌の上に大きなノミが現れた。

 吸血ノミだ。

 森の中でよく見かけるモンスターだ。

 ウィンにとって難なく倒すことができる通常モンスターである。

 しかし、今のウィンは杖をまともに振ることすらできないか弱い女の子と化していた。

 吸血ノミが穴を降りてウィンの方に近づいてきた。

 ウィンの背中に飛び乗ると、そのまま首筋へと近づいてきた。


 

 服や髪の間から覗く細い首筋に吸血ノミの口が触れた。

 吸血ノミは血を吸いやすいように太い血管を探っていた。

 そして、細い口を白い首筋に突き刺した。

「いたっ!」

 ウィンの首筋に激痛が走った。

 ウィンは抵抗しようとしたが、身体中に粘着性のゲルが絡みつき動けなかった。

「いやっ!離れてっ!」

 ウィンは悲鳴を上げたが、吸血ノミはウィンの首筋から離れなかった。


「うあ゛っ・・・」

 吸血ノミがウィンの首筋から血を吸い始めた。

「いやああああっ!」

 ウィンは悲鳴を上げた。

 しかし、悲鳴は穴の底にこだまするだけで、誰にも届かなかった。

 吸血ノミは目の前の泣き叫ぶ餌から新鮮な血を頬張っていた。


「ううっ、たすけてっ!いやああっ!」

 固く閉じた瞳からは涙がこぼれ、額から汗がこぼれていた。

 しかし、吸血ノミから逃れることはできず、身体を揺らすことしかできなかった。



「あ゛っ・・・」

 ウィンは視界がざらつき、意識が遠くなるのを感じた。

「うっ、ああっ!」

 ウィンは何とか意識を保とうとしていた。

 しかし、頭に血が回らなくなり、意識が朦朧としてきた。

 ウィンの顔は真っ青に染まっていった。


 新鮮で温かい血にありつけた吸血ノミは身動きが取れなくなった哀れな少女からどんどん血を吸い上げていた。

「ああっ・・・うああっ・・・」

 ウィンは苦し気に身を捩っていたが、その動きはだんだん鈍くなっていった。


「・・・ハァ、ハァ、ハァ・・・」

 苦しそうに浅い呼吸を繰り返し、ウィンの身体は限界を迎えていた。

 吸血ノミはウィンの血を吸って肥大していた。

 重くなった吸血ノミがウィンの背中に圧し掛かっていた。

「う・・・ああ・・・」

 ウィンは悲鳴を上げる体力もなくなり、だらしなく開いた口からかすかな呻き声を上げることしかできなくなってしまった。


 何とか意識を保っていたが、血を吸われて重度の貧血に陥った身体は限界を迎えていた。

ウィンはだんだんと気が遠くなり、瞼が重くなっていった。

「・・・う・・・あ・・・」

 真っ青に染まった顔は生気を失っていた。

 閉じかけた瞳は光を失い、掴めなかった杖だけを眺めていた。

「う・・・」

 ウィンは力を失い、瞳を閉じてしまった。

 鮮やかな緑色の瞳が開くことは二度となかった。


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